【知れば騙されない】おとり広告(ミシンの実例)

ミシン生き方スタイル
ミシン

ミシンの思い出

♩一度回せばママのにおい 二度回せば お母さんの顔♪

テレビアニメ「ピーターパンの冒険」で流れていた歌です。

耳について離れません。

この歌は、フック船長(海賊でピーターパンの敵役)の世話をするスミ-水夫長が、ミシンをかけながらうたう歌です。

声優の緒方賢一さんが、味のある声で歌います。

すると、強面のフック船長が、「その歌もミシンの音も嫌いだ」と怒りだします。

その理由は、「ミシンの音を聞くと、7歳の時に死んだ母を思いだして、切なくなる」からというものです。

それだけ、お母さんとミシンは結びついたのです。

今は、安くて簡単に服が買えるので、ミシンで作るという人は、少ないでしょう。

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足踏み式のミシンで服を作ってくれた母

フジイの母は、足踏み式のミシンで、よく服を作ったり、サイズや形を直したり、してくれていました。

遠足など行事の日には、朝起きると、夜なべをして作ってくれた新しい服ができていたりしました。

優しくて聡明な母でした。

裁縫が好き

母の影響で、フジイも、裁縫で服や布小物を作るの好きです。

既製品にはないデザイン、布地で、一点物が作れます。

忙しくなってからは、いちから作るのではなく、襟やポケットのデザインを変えたり、ボタンやベルトを交換したり、違った雰囲気にアレンジしていました。

フジイは電動ミシンを使っていました。

けれど法律の仕事をやり出してからは忙しく、使うこともなくなって、押し入れにいれたままになっていました。

「ミシンを買おう」と思いつく

おとり広告と訪問販売

もうずいぶん昔になります。

新聞に挟まれたチラシに目がとまりました。

ミシン1台1万円の広告チラシでした。それも、近くの店舗で展示会をすると書いてありました。

たまたま時間が空いたので、チラ見してきました。

「そういえば、ミシンを使わなくなって長いことたつなあ」と思っていると、「ミシンの点検、修理もします」というではありませんか。

フジイの家にあるミシンを点検すると同時に、ミシンを持ってデモンストレーションに行くことになりました。

このような形が、「ミシンの訪問悪質販売の典型」であるとは、気づいていませんでした。

ミシンと悪質商法のイメージが結びつかなかったからです。ミシンには、懐かしくも優しい思い出があったからです。

高額ミシンを買わせるための流れ

約束の日には、男女二人組で来ました。女性が上司で男性がまだ駆け出しといった風情です。

ミシンをなぜか2台持ってきました。1台が1万円の小型ミシンです。

まず、家にある電動ミシンについては、さほど見もしないで、「これはもう使えない」「もう部品がなくなっている」とか言って、さっさと切り上げ、持ってきたミシンをみせます。

「修理するくらいなら、新しいミシンを買った方がお得です。性能も格段によくなっています」とセールスを始めます。

ここまでは、一般論として合理的な話です。

問題はここからです。

チラシや展示会で、イチ押しだったはずの1万円のミシンをけなし始めます。

怪しい雰囲気ではありますが、まあ、1万円ではたいしたことを望むべくもない、というのも、正論ではあります。

それなら、最初からそのミシンを広告するな、ということではありますが。

高額ミシンを買わせるテクニック

その次は、もうお気づきですね。

フジイの持っているミシンを修理できないとディスり、あれだけ宣伝した1万円のミシンをディスり、やっと選択肢としては、頼みもしてないのに持ってきた高額ミシンしかなくなります。

いきなり値段を告げたり、いきなり買うように迫ったりはしません。

このミシンで何ができるか、熱く語ります。

ミシンに関心のある人は、このミシンで、あんな物、こんな物を作れたら良いな、と夢を描きます。

だから、「このミシンがあれば、これができる、あれができる」、「それも簡単な操作で、バリエーション豊かにできる」とくれば、興味を引くことは間違いないのです。

だんだん、胡散臭い雰囲気がでてくるのは、ここからです。

値段は言わない。

色々できることは言うが、具体的な実演はせず、作った物だという刺繍されたハンカチを見せる。

料理番組で、時短のために、「はい、こちらが冷蔵庫で30分ねかせたものになります。次はこれに …… 」形式です。

しかし、お料理は、省いたところはメインではなく、「単にねかせておいただけ」です。

ところが、ミシンの場合は、「ただの白い布が、美しい刺繍入りのハンカチになる」その過程こそが本質的な機能なのです。それを飛ばしたのでは、違いますよね。

そして、ついにやってきました。高額ミシンを売るためのテクニックトーク。

・この性能、このミシン、すごいでしょう!

・その分、お高いですけど、すぐに元が取れますよ。

・今、在庫があるのは、あと数点です。

・あなたのようにミシンの良さが分かる人に、使ってもらいたいの。

・このミシン、いったい、いくらだったら買ってもいいと思いますか?

もう悪質セールストークの典型になってきました。

普通に、言い方だけを聞くと、まともな販売トークに聞こえます。

言っていることは、商品がまともで、適正な価格でありさえすれば、問題はありません。

だからこそ、人を罠にかけることができるのです。

特に最後のひとこと「いくらなら買いたい?」は、罠だったのです。

フジイは、当時、これが有名な心理を悪用したトークだとは、知りませんでした。

もともと「1万円で縫うだけのミシン」を考えていたのですから、「刺繍ができたりする高機能ミシン」の価格帯など予備知識がありません。

だから騙されるのでしょう。

いくらか想像もつかず返答に迷っていると、男性のセールスマンが口をはさみます。

「このミシンを買われた方は、50万以下なら買いたい、と言われてましたよ」

ミシン運びだけでは役立たずなので、こういう役目も引き受けていたのでしょうか。

「クレジットを組めば、月1,2万円で、すぐ使えます!」

聞かれもしてないことを続けます。

そこでおもむろに、女性の方が、断言口調で、話を引き取ります。

「50万円でも買いたい人がいるのです。このミシンが、たったの35万円なんですよ。それもあなたのように裁縫が好きな人には、思い切って、いくらかまけてあげられる。いくら安くしたら、買えそう?」

ちょっとまって、まだも買うとは言ってない!

それでも、お構いなしに、実に巧妙に、買うのが当然という既成事実を作っていきます。

ここで、値引き交渉「うーん、思い切って5万円さげてもらえると、買えるかな?」とか言ったとすると、相手の思うつぼです。

この流れでは、「5万円引いてくれたら買う」ことになってしまっています。

セールスマン側が、「分かった、特別の特別。他の人には言わないでね。希望通り5万円値引きして30万円にしてあげる」

なんだか、買う方が、押しつけ販売してきた方から恵んでもらっている感になってしまいます。

形勢が逆転したら、もう後は相手の言うがままでしょう。

「どうせ5万円も値引きできないだろうから、無理だと言われる。それなら断る口実になるからいいわ」と思ってふっかけたところが、あっさり、OKが出てしまった、引くに引けなくなります。

もう、今さら要らないとは言えない、自分から5万円下げれば買うと言ったような気がする …… 。

普通は、35万円のミシンのはず、それも2人のセールスマンが家まで来て、何時間も話して、5万円も安くできるはずがないのです。

あっさり、5万円引けるのは、初めから、この高額ミシンは、30万円で売っても、十分、利益どころか、セールスマン法外な歩合給も払える値段のミシンだったのです。

ネットで同程度のミシンを買う

あの高額ミシンの相場はいくらだったのか?

当時は、今ほどネット社会ではなく、検索すると欲しい情報が見つかるというものでもありませんでした。

パンフレットを頼りに調べてみると、いろんなことが断片的に分かってきました。

まず、あの高額ミシンと同じ物はないらしい、ということです。

いわゆる「身バレ(みばれ・身元や正体が明らかになってしまうこと)」しないために、訪問販売用の独自ラインを作成しているか、既製品に加工して独自商品にしているか、だと思います。

そこで、残していったパンフレットやセールストークをもとに、同様の機能がある有名メーカーのミシンを調べると、ほぼあの高額ミシンと同じと思えるものが、ありました。

参考価格50万円だが、販売価格35万円のミシン。

それも出精値引き(しゅっせいねびき)をして、30万円にした高額ミシン。

     ↓

いくらだったでしょうか?

     ↓

5万円でした。

元手が5万円程度のミシンなら、5万円引きの30万円で売れれば万々歳ですよね。

フジイは、もうひとランク上の、それでも6万円しかしないミシンを、ネットで買いました。

ミシンという物は、故障やバージョンアップなどを考えないといけないため、2,3万円の物でも十分だったかもしれません。

セールスマンの高額ミシンは買わなかったとはいえ、高性能ミシンの値段に30万円、35万円などの金額が前提になってしまっていました。

だから5,6万円でも安い、となってしまっのです。

サイト「ミシンの迷信」との出会い

セールスマンの話からミシンについて、調べるうちに、「ミシンの迷信」というサイトに出会いました。

今も、調べると残っていました! デザインなどはずいぶん変わり、きれいになっていましたが。

ミシンの迷信」は「ミ迷信」との略称があり、「妻がミシンを欲しがった」ことからミシンとその販売方法につき検討された、とても素晴らしい内容のサイトです。

そこには、フジイとほぼ同じようなセースルを受けたことが書かれていました。

予断を持たずに、マーケティングという観点から、冷静かつ合理的に書かれています。

それほど第三者目線で、公平に検討された結果、やはり悪質販売だと判断されるに至っておられます。

ぜひ、ご一読されると興味深いと思います。

特に「実録!ミシン訪問販売」は読み応えがあります。

サイト作成者は、マーケティングに詳しく、昨今のSEOの視点から記事を読まれても興味深いかもしれません。

騙されないための注意点まとめ

2008年ミシン販売につき処分

 2008年3月19日に、経済産業省は、特定商取引法違反行為があったとして、JUKI家庭製品株式会社に対して、6か月間、訪問販売に関する勧誘、申込みの受付及び契約の締結を停止するよう命じてました(特定商取引法8条1項)。

 組織的に、このようなミシンの販売方法を行っていたのですね。

注意点まとめ

粗悪な商品を、高額で売りつける手口には、共通点があるので、騙されないように、まとめてみました。

・安いおとり広告に釣られない。

・ネットで商品についての情報を事前に得ておく。

・数量限定とか、残し少しと言われても、即断しない。

・定価を隠す商品はあやしい。

・他の同等品と比べられないようにされた商品には気をつける。


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