時効
時効とは
「ある出来事から一定の期間が経過したことによって、現在の状態が法律上の根拠を有するか否かを問わず、その事実状態に適合する権利や法律関係が存在すると扱う」制度です。
もっと分かりやすく言うと、「長い間、時が経つと、今の状態をそのまま受け容れること」です。
他にも要件があったり、期間の経過を止めたり、リセットしたりする場合もありますが、現在の状態が長く続いているのは、真実や正当な権利に基づいている、と評価されるからです。
時効の種類
刑事事件の時効と民事事件の時効があります。
刑事事件の時効には、犯人を起訴して有罪判決を得ることができなくなる「公訴時効」(刑事訴訟法第250~255条)と、確定した刑の執行ができなくなる「刑の時効」(刑法第31~34条)があります。
民事事件の時効には、権利がないとする「消滅時効」(民法第166~169条)と、権利があるとする「取得時効」(民法第162~165条)があります。
時効で逃げ切ろうとした犯人たち
刑事事件では、かつて殺人罪に時効がありました。
2010年4月の改正で、最高刑が死刑となる罪の時効が廃止されました(詳しくは法務省だよりをご覧ください)。
例えば、事件から25年経っても犯人が分からない、逮捕できない場合は、時効が成立していました。
その後、真犯人がみつかっても、逮捕も処罰もできないのです。
映画「22年目の告白ー私が殺人犯ですー」は、時効成立後、犯人だと名乗る人物が現れるというものです。
現実の事件では、松山ホステス殺害事件の犯人、福田和子の逃亡が有名です。
公訴時効が成立するわずか21日前に逮捕されました。
かつては、証拠もなく、それだけ経てば、もはや捜査も不可能と思われていたのです。
しかし、殺人などの重罪を犯しながら、逃げおおせれば罪に問えないのは、納得できないとの見方が大勢を占めました。
また科学捜査の進展で、新たな証拠や手がかり発見も期待できるようになり、時効として諦めなくてもいいようになりました。
そこで、改正が行われたのです。
改正された民法
民法の改正
民法の債権分野(契約関係などを規律)も改正されました(平成29年 5月26日 成立)。
民法は、六法のひとつとされていて、重要な法律です。
そして特に、普通の人にとって、一番身近な法律です。
そんな民法の債権分野が改正されたのは、何と、民法が制定されて以来120年ぶりのことです。
そして、その改正された民法は、令和2年4月1日に施行されています。
法律が改正されても、すぐには実施されないのが原則です。
なぜなら、改正された法律が成立してから、その内容が皆に知られる期間を待っているからです。
もう、施行日が経過したので、皆様は知っていることになっています。
「そんな話、聞いてないよ」では通らないのが法律なので、ここで押さえておきましょう。
改正点全てについて、知っておきたいという方には、法務省の分かりやすいパンフレット「民法(債権法)改正」を参照してください。
時効の改正のポイント
正確に説明しようとすると長くなり、言葉も難しくなっていきます。
詳しく知りたい方は、伝聞や孫引きではなく、法務省民事局作成の「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-重要な実質改正事項-」をご覧になるのが良いと思います。
ここでは、知っておくべき時効の改正ポイントをあげておきます。
業種ごとに異なる短期の時効を廃止し、原則として「知った時から5年」(消滅)に統一。
生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間を「知った時から5年、行使できる時から20年」と長期化した。
なぜ変わったか
なぜ、時の経過によって、本来あるはずの権利が消滅する「消滅時効」を定めたのでしょうか?
・ 証拠が散逸(さんいつ)し、証明が困難となる。
・法律関係の安定を図る。
・ 権利の上に眠る者は保護しない。
しかし、証拠もITの発達で紙から電子媒体に変わっています。そうすると、保存しやすく、証拠としても長年保管することが可能となりました。
また、権利があるのに時間が経過したからといって、なくすのは納得できない、そういう思いがあります。
そこで、短い期間を決めていた複雑な債権を統一したのです。
また、人生100年という高齢社会になって、身体や命の大切さがより意識されるようになりました。
そこで、生命・身体の侵害について長くしたのです(「健康寿命 ~ その人らしい命の長さ」をご参考)。
証拠と主張が大事
大事なものは、証拠を残しておきましょう。
フジイの経験をお話します。
かつて書斎のつもりで借りていたマンションがあったのですが、あまり利用しないので1年ほどで解約して明け渡しました。
ところが、それから2年も経った頃でしょうか、未払い賃料があるから払えとの請求書がきたではありませんか!
いくらでも対処はできるのですが、支払ってきた振込書と敷金の返還書類を残していたので、証明はすぐでした。
学生さんがよく借りていたマンションだったので、中には二度払いをさせられた方もおられるのではと思うと、所有者が許せなかったですね。
どうやら当時の持ち主が、整理せずに別の会社に売ったようでした。
基本となるもの、金額が大きなもの、生活に直結するもの、大事にしたいもの、それらについては、場所が許せば、保管は長くすることをお勧めします。
そして、互いの権利関係は、はやく実行に移して、決着をつけておく方がいいです。
例えば、10万円貸していて、返還の時期がきた時がきたら、貸した方は返還請求を、借りた方は返還を早く実行するか、請求なり承認なりした方がいいです。
お互いのために、権利と義務をはっきり主張しておくと、後々のトラブルが予防できます。
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