自殺から命を守るー遺された人のケアも大切

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悲しいニュース~有名人の自殺

自殺のニュース

最近有名人の自殺のニュースが続いています。

華やかに見えているだけに、「なぜ?」と思い、衝撃が大きいですね。

逆に、華やかな世界で活躍していればこその、普通の人には分からない苦労や悩みがあったのかもしれません。

まずは、ご冥福をお祈りします。

実は多い自殺

自殺者の統計は、警察庁が公表しています。

自殺者の推移や年代別などの統計も、令和2年3月17日に発表された「令和元年中における自殺の状況」に載っています。

この報告によると、次のことが分かります。

・令和元年の自殺者数は、20,169人。

・平成22年以降、10年連続の減少となり、昭和53年からの自殺統計で過去最少となる。

・男性の自殺者数は、女性の約2.3倍もある。・

・年齢階級別でみると、「50歳代」が3,435人で全体の17.0%を占め、次いで「40歳代」(3,426人、17.0%)、「70歳代」(2,917人、14.5%)、「60歳代」(2,902人、14.4%)の順となっている。

・原因・動機が明らかなもののうち、その原因・動機が「健康問題」にあるものが9,861人で最も多く、次いで「経済・生活問題」(3,395人)、「家庭問題」(3,039人)、「勤務問題」(1,949人)の順となっている(複雑な要因が重なっていたりうかがい知れない事情もありえます)。

今年(2020年)については、コロナ禍と経済などの落ち込み、生活様式の変化などから、予断を許しません。

今年として公表されているのは、8月までで、累計13,109人とのことです。

減少を続けていた自殺者数ですが、7月から前年比で増加に転じ、8月は1849人(速報値)に上り、前年の同じ時期より246人増えています。

これ以上増えないように、救える命があるはずです。

死を悼(いた)む

人は、生物的な本能として「死」を最も恐れているはずです。

最も避けたいはずの「死」を、自分で自分に課する「自殺」を選ぶのは、想像を絶する苦しみがあったからだと想像できます。

また、近親者や愛する人たちは、その死によって大きな衝撃をうけることにもなります。

専門外なので不用意なことは言えませんが、もっと早く、その兆候を知って誰かが介入することによって死を避けられなかったのか、そう思えます。

「人は2度死ぬ」と言われています。

1度目は生物としての死、2度目は人の記憶から亡くなる社会的な死、というものです。

お亡くなりなった方の死を悼(いた)み、せめて2度目の死が長く訪れないように、その人のことを折に触れて思い出して供養することが、残された者にできることではないでしょうか。

自殺にまつわる評価

刑法では

刑法では、自殺に関与した者を処罰することによって、自殺による死を避けようとしています。

また、自殺も、他者による殺人と同様に人をあやめる行為なので、手助けを禁じているのです。

刑法には、「自殺関与及び同意殺人」として次の規定があります。

刑法 第202条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。

教唆(きょうさ)とは、そそのかすことです。

幇助(ほうじょ)とは、手助けすることです。

嘱託(しょくたく)とは、頼まれて、その頼みを聞き入れることです。

承諾(しょうだく)とは、文字通り、被害者から「ころしてもいいよ」との同意を得ることです。

また、刑法第203条では、自殺関与や嘱託殺人につき、未遂も処罰するとしています。たとえ、自殺行為によって、死に至らなかったとしても、これを許さないということです。

文学では

心中(しんじゅう)

男女が共に死を選ぶ「心中(しんじゅう)」は、2人して行う自殺だと言えます。

近松門左衛門の人形浄瑠璃『心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)』や、渡辺淳一の『失楽園』は、あの世で添い遂げるという意味で心中を描いています。

2編とも映画にされていますが、現実の心中は美しいものではなく、生きる道を探ってほしいと思いますし、現代なら可能なはずです。

親しい人の自殺

自殺を扱った文学作品は多いですが、フジイが印象に残っているのは、村上春樹の『ノルウエイの森』です。

(以下、内容に触れます)

高校時代の親友と大学時代の恋人の2人を、自殺でなくした主人公の喪失と再出発の話です。

不思議な静けさと清涼感のある小説で、映画にもなっていますが、自殺者の近親者の思いが表現されています。

フランソワーズ・サガンの『悲しみよこんにちは』も、事故死ではなく自殺だから成り立つ文学です。

文学は、正面切って「自殺は悪」とは言いませんが、残された人々の深い心の傷を通じて、自殺や生きるということを考えさせてくれます。

突然の自殺

フジイにとって心に残る小説として、宮本輝の『幻の光』があります。

美しい文体と表現の中に、いい知れない生と死の狭間を感じることができます。

(以下、内容に触れます)

主人公の夫が、突然、自殺してしまいます。

幸せな日々を送っていたはずで、「どうして死を選んだのか」動機が分かりません。

遺された者として日々を送りますが、再婚して生きていこうとします。

「人は精がのうなると、死にとうなるもんじゃけ」、その言葉が印象的でした。

遺書が残されていたり、原因が推測できるもの(多額の借金など)の他に、どうして自殺したのか分からないものも多いと聞きます。

遺された方が、自分の気持ちを整理されて、強く生きて行かれることを願っています。

この小説は、そんな力を与えてくれる気がします。

最後のメッセージにならないために

メッセージを発している

自殺しようとしている人は、何らかのメッセージを発していると言われています。

この電話を切れば、それが最後になるかもしれない、そんな電話があるかもしれません。

その電話は、夜中だったり、何時間も続くかもしれません。

不安を感じたら、何か手をうってあげてください。

少なくとも、今切ることが、最後の引き金になるかもしれません。

いい迷惑だと、思う方もおられるかもしれませんが、貴方を頼っているからだと思います。

フジイも、仕事でフラフラだったのですが、延々と続く電話を一晩中切らずに聞き続けたことがありました。

明け方近くになって、「寝るわ」といって相手から電話を切ってくれました。

いのちの電話」という活動をしておられるところもあり、頭が下がる思いです。

こちらでは、自殺によって残された遺族の方々の支援にも取り組んでおられます。

真剣に受け止めて

「死にたい」と言われる場合もあります。

そのときは、「どうせ口先だけ」とか、「実際にはしないから」とか、軽く考えないで、真剣に受け止めて緊急事態だと思うことが大事です。

また、一度未遂したら、「怖さが分かってもうしないだろう」とか、「二度目はないだろう」とか、都合よく考えないで、次は本当に自殺してしまうと気をつけることが大事です。

うつ病などの精神疾患で、希死念慮(きしねんりょ・死にたいと思う気持ち)を自分ではどうすることもできないこともありえます。医療に至急、つなげてあげてください。

自殺予防のための行動

以上は、フジイのあくまでも仕事を通じて知った経験によるものです。

専門外の者が、知ったかぶりで無責任なことを言ってはならないので、次に厚労省があげているものを紹介しておきます。

あなたにも出来る自殺予防のための行動」です。

〈傾聴〉本人の気持ちを尊重し、耳を傾ける。

〈つなぎ〉早めに専門家に相談するよう促す。

〈見守り〉温かく寄り添いながら、じっくりと見守る。

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