相手も第三者も説得するには
裁判になれば、紛争の相手も、紛争を裁く裁判官も、説得しなければ勝てません。
そのためには、自分の主張が正しいことを、論理的に説得する必要があります。
そもそも、法律は、現代社会を仕切る、誰もが守らなければならない最低限のルールです。
そのため、法は納得できるものでなくてはなりません。
このようにして、説得の論理は、法律の分野で最も発達したのです。
その論理が、「三段論法」と言われるものです。
三段論法
法律で使う三段論法は、世間一般で使われているものに制限がついています。
- 大前提 …… 法
- 小前提 …… 与えられた事実や条件
- 結論 …… 当てはめ
これが、法律判断をするときの三段論法です。
例えば、「親は子を養う義務がある」(大前提)、「私は、Aの子である」(小前提)、「私は、Aに扶養を求めることができる」(結論)となります。
詭弁との違い
詭弁との違いは、三段論法では「大前提が法であり守られるべき絶対条件であること」、「小前提が、大前提で判断できる範囲内の事実であること」、「当てはめが合理的に導かれること」です。
具体例で、詭弁の誤りと三段論法との違いをみていきましょう。
詭弁の例 (1)
- 鳥は、全て空を飛べる。
- ヤンバルクイナは飛べない。
- よって、ヤンバルクイナは鳥ではない。
なぜ誤った結論になったのでしょうか?
ほとんどの鳥は空を飛べるけれど、空を飛べない鳥もいます。
つまり、大前提が誤っているのです。
鳥か否かの区分は、飛べるか飛べないかでは、ないからです。
法律も、絶対真理ではありません。
時代に合わなくなったり、法律の価値観自体が間違っていたこともあります。
そんなときは、「悪法も法」として惰性で従うだけでなく、正しい法に変えることも求めていく必要があります。
詭弁の例 (2)
- 鳥は、全て空を飛べる
- コウモリは飛べる
- よってコウモリは鳥である。
なぜ誤った結論になったのでしょうか?
今度誤ったのは、どこに原因があるからでしょうか?
1の大前提が、誤っていることは(1)と同じです。
しかし、誤った結論になった理由は、そこではありません。
誤ったのは、3の当てはめ、が原因なのです。
1は鳥は空を飛べるとは言ってますが、「飛べるものは、全て鳥だ」とは言っておらず、1の逆が真実であるとの証明はされていないのです。
それにもかかわらず、コウモリは飛べるから鳥だとの結論を導いたのは、1の大前提に当てはめていないからです。
2の小前提を当てはめたのは、1の逆である「飛べるものは、全て鳥である」だったのです。
このように、三段論法を正しく使いこなすことができるようになれば、三段論法を装った悪質な詐欺や断定には騙されないようになると思います。
活用
三段論法は、「へりくつで」もなければ、「ためにする議論」でもありません。
そのため、裁判の場だけではなく、日常の場においても、活用していくと良いと思います。
人を説得するだけでなく、自分自身も論理的な考え方が、できるようになります。
一見、論理的に思える詭弁は、インテリの方が騙されやすいので気をつけましょう。
「何かおかしいと思いつつ、反論できないから、渋々従う」という人にならないようにしましょう。
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